「……ん……」
泥のように落ちていた微睡みからゆっくりと浮上する。目を開いて隣を見るとそこに誰もいない。でも、少しだけ空いたドアの隙間から漂ってきた良い匂いに彼がどこにいるのかすぐに分かったから特に焦らずに僕は眠い目を擦った。
お互い仕事が忙しくてすれ違ってばかりの生活の中、ようやく重なったオフだったので昨夜はそれはもう盛り上がってしまって。防音性の良い部屋を借りているからお隣への騒音は多分大丈夫だけれど、僕の身体へのダメージはなかなかみたいだ。
まず、咽喉が物凄い。掠れてるなんてものじゃない。枕元に置かれていた水と咽喉に効くタブレットでなんとか音になるくらいまで回復出来た。今日はもう声なんてほとんど出さずに療養しないと明日はラジオの収録がある。ゲストの子はラジオ番組に出るのが初めてだと聞いたから僕がしっかりとしなくてはいけない。
「ふぅ……」
下半身はいつも通りと言えば良いのかほとんど感覚がない。彼が朝食を作って迎えに来てくれるまでどうせ動けはしないのだからSNSでも見ようかとスマホを手に取った。それとほぼ同時だった。
「……んっ♡ ~~~~?♡、っ♡」
これ、僕、イってる……!お腹がきゅんきゅんして、勝手に腰が揺れる。
「ぁ、ぇ、な、んで……?♡」
お腹を押さえて蹲ってみても全然収まらず、でも他に出来ることもないから早くこの波が無くなることを願うしかなかった。
「は、っ♡、ん……♡」
どのくらい時間が経ったか分からないけれど、なんとか少しまともになったお腹を擦りながら起き上がる。擦る感覚もお腹に響いて少し辛い。なんだったんだろうと考えていると、どうやら朝食を作り終わったアマミネくんが僕を迎えに来た。
「あ、百々人先輩起きてたんですね。朝めし出来ました……もしかして具合悪いですか?」
そう言って慌てて僕の方へアマミネくんが駆け寄ってくる。多分、さっきの出来事で顔が赤くなっちゃっているんだと思う。大丈夫だよって言う前に、彼の掌が僕のおでこに触れた。
たったそれだけだったのに。
「ぁっ♡ ~~~~っ♡♡ っん~~~~~♡」
また、イった。さっきより深い気がする。思わず目の前に立つアマミネくんのシャツを力いっぱいに握ってしまう。明らかに普通の体調不良では出ないであろう僕の声にアマミネくんは固まってしまっている。でも、僕はそれどころじゃなかった。
「は、ぁ♡、ぅ……っ♡」
なんとか引いた甘い波に呻きながらアマミネくんにシャツを開放して、その顔を見上げる。予想通り真っ赤に頬を染めながら、ぎこちなく彼は聞いてきた。
「昨日、足りなかったですか?」
「ちが、よく、分からないんだけど、勝手に……ぁ"……♡」
さっきよりは軽かったけれど、びくりと腰が跳ねた僕を見てアマミネくんも僕の身体がどうやらおかしくなっているのだと察してくれたようで、ゆっくりと隣に腰を下ろしてスマホでなにかを調べ始めたみたいだ。
「…………あー……これかも」
僕が2回ほど波に耐えている時間で原因に行きついたらしいアマミネくんは気まずそうな顔で僕の方を見て言った。
「なんか……中だけでイキすぎるとそうなることがある、らしくて」
時間経過での解決しかないらしい。と告げられた僕はなんの言葉を返すことも出来なかった。
その後、なんとか波の合間にゼリー飲料や水分を取り、トイレもほぼ介護のような扱いでお世話してもらって、夕日に部屋が染まる頃にようやく一息付ける程度にお腹の疼きは収まった。セックスしたかったけど、明日は仕事があるのだから。と僕もアマミネくんも必死に耐えたのだから褒めてもらいたい。誰にもこんなこと言えないけれど。
「……死ぬかと思った……」
「次からは気を付けましょうね……」
少し反省したように言うアマミネくんの言葉に頷きながら、でも癖になってちゃうかも…なんて考える僕がいたのは秘密である。